VRサイクリング 薩摩街道5日目。鹿児島県北西端の町、出水宿から県境を超えて、公害で有名になってしまった水俣に位置する陳町宿を通りすぎ、難所津奈木太郎峠を超えた佐敷宿まで42kmの長丁場。いよいよ九州で最後に残った熊本県に入る。水俣は薩摩街道で通る限りは、イメージと異なり山と海に囲まれた風光明媚な土地であった。水俣病は地元の殿様企業だったチッソがメチル水銀を海に水俣湾に垂れ流し、その海産物を食べた地元の人々が水銀中毒にかかったといういわゆる公害の原点とされる事件である。1956年に発覚してから原因がわかっていたにも関わらず1968年にいたるまで対策されずに垂れ流しになっていたという企業の利己主義と行政の無策が招いた人災は死者約2000人、患者約2万人の犠牲者に及びその後漁業は30年に渡って壊滅、水俣の経済がチッソで成り立っていたことから住民に深い亀裂を生み、補償も不完全で裁判は現在に至るまで継続する、という根の深い災禍となっている。今年、ジョニーデップが制作したMINAMATAという映画がこの問題を取り上げ世界的に話題になっているが、水俣市は一旦これを後援する立場を表明しながら後でそれをキャンセルしているのは、市民の傷の深さを物語っている。今回通りがかって、本来素晴らしい自然環境を有する土地が、不幸な人災により長年に渡って公害で汚染された土地として不当な評価を受けてきたことが認識できた。
2021/7/16 薩摩街道5日目 出水宿〜陳町宿〜佐敷宿
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